映画「標的の島 風かたか」

コースケ+きょうこ

2017年04月20日 22:54

映画の冒頭からエンディングまで涙が止まりませんでした。

三上智恵監督の最新作「標的の島 風(かじ)かたか」を観て来ました。
前作「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」、前々作「標的の村」同様、大きな問題を取り上げているにもかかわらず、未来への希望が力強く描かれています。

でもその後の展開を知っているだけに、見終わった後はとても重たい気分でした。

なぜならこの映画後の沖縄は、
座り込み現場のリーダー山城博治さんをはじめ逮捕者が続出し、高江では突貫工事でヘリパッドが完成してしまい、辺野古では埋め立てに向けた準備が着々と進んでいます。
日本では、共謀罪法案が閣議決定され、安倍政権の横暴ぶりは加速する一方です。
世界を見てもアメリカのシリア攻撃、各地で起きるテロ事件など。

もう絶望的な出来事のオンパレードですから。

でもそれだからこそ、この映画を見て冷静に問題を整理したり、希望を見出したりできてとても良かったと思います。

新基地建設反対の運動を繰り広げている現場に、政府は大量の機動隊を送り込みます。そこでは、人を人とも思わないような無情な暴力的な行為で、非暴力の市民たちが次々に排除されていきます。一方、宮古島や石垣島では、自衛隊配備の賛否で島が分裂する現実に直面しています。
沖縄はなんでこんなに苦しい思いを続けなければならないのでしょうか。
いつまで戦い続けなければならないのでしょうか。

「子どもたちのためにできることを全力でしなくちゃ。私たちの祖先がしてくれたように」と語る宮古島のお母さんたち。
「軍隊は人の命を守らない」ことを伝え続ける石垣島のマラリア地獄を生き抜いたおじいさん。
座り込み現場で女性が暴力を受け緊急搬送された時に、「ごめんな」と人目も憚らず泣きじゃくる山城博治さん。
市民たちの切実な訴えに誠意のない対応を続ける防衛省職員に、珍しく声を荒らげて怒鳴った照屋寛徳参議院議員。
苦しい現実に置かれていてもあきらめずに前進する、魅力的な人々がたくさん登場します。彼らの熱意や深い愛情に刺激を受けて、自分には何ができるかを真剣に考えさせられました。


タイトルの「風かたか」とは、沖縄の言葉で防波堤、風よけなどを意味します。
古謝美佐子さんの名曲「童神(わらびがみ)」では、「風かたか」となって我が子を守りたいという親の願いが歌われています。
米兵による暴行殺人事件の被害女性の追悼集会で、稲嶺名護市長は、「私たちは『風かたか』になって彼女を守ってあげられなかった」と悔しさをにじませました。

愛しい子どもたちを産み育み、守りぬこうと決意した母親たち。
ひとりの女性を守れなかった無念さに涙を流す人たち。
祖先から受け継いだ島を、美しいまま次世代へ伝えていきたいと願う人たち。
この映画で描かれているのは、平和のために未来のために「風かたか」となりたいと切に願う沖縄の人たちの姿です。

そして映画の中で描かれる「風かたか」の、もうひとつの隠れた意味。
アメリカのエアシーバトル構想のもとに、自衛隊の配備が進む与那国島、宮古島、石垣島。
それは辺野古や高江など沖縄本島の軍事強化とも連動し、アメリカが強硬に日本政府に急がせているものです。
これは中国からの攻撃を想定し、アメリカ本土決戦を未然に防ぐための作戦だと考えられています。
また沖縄が捨て石になるということです。

そして今回の北朝鮮とアメリカの衝突の中で、米軍は沖縄での戦闘を想定した訓練を始めています。

日米同盟の名のもとに、アメリカの「風かたか」にさせられている沖縄、日本の現実を見てください。
そして、沖縄の現場で何が起きているか知ってください。
私たちは真実を直視し、勇気を持って行動しなくてはならないのです。
私たちの平穏な生活と、受け継がれてきた伝統と子どもたちの未来を守るために。

ぜひ多くの方に観ていただきたい映画です。
順次全国で観られるようになっています。
>> 各地の上映スケジュール

三上監督のブログも、現場の様子がわかりやすく書かれていてお勧めです。
三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記




(きょうこ)


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